ブコビナ地方の修道院巡りを終えるとコステルが言いました。
「サトーに見せたいものがある。ビカズ峡谷だ。なにしろルーマニア一番の景観だと聞いている。そこにはビカズ湖とロシュ湖があり、大きな滝もある。きっと君も気に入るだろう。実は私自身も是非見てみたいのだ。」
私はその提案を嬉しく思い即座に同意しました。ところが山道は九十九折りにくねっていて、走っても走っても目的地にはなかなか辿り着きません。
15時40分、私たちはようやくビカズ峡谷に到着しました。グラ・フモールルイから昼食時間も含め、延々4時間40分を要しました。
ビカズ峡谷の駐車場はどこも車でいっぱいでした。駐車場の近くには出店が立ち並び、多くの旅行者でにぎわっていました。私たちがここに着くまで交通量はあまりなかったので、正直こんなに車や人が多いとは思いませんでした。
旅行者の中にはカメラを持つ外国人もたくさん見られました。
マリアさんからトゥルダ峡谷(Cheile Turzii)を案内してもらったときもその景観に圧倒されましたが、ビカズ峡谷はルーマニア一といわれるだけあって、そのスケールも壮大なものでした。巨岩、奇岩がつくり出す景観はどこまでも果てしなく続いているように思われました。青く晴れ渡った空に流れる白い雲、谷川を流れるせせらぎの音。そこには悠久の自然がありました。
(ロシュ湖) Lacul Roș. 2010.8.7
ロシュ湖はビカズ湖と隣接する湖で、それほど大きくはありませんでした。こちらにも観光客が多く、また、避暑に訪れて長期滞在しているのではないかと思われる人々も多くいました。木陰のベンチでのんびり過ごす人々、ボートに乗って楽しむ家族やカップルがたくさん見られました。
(ビカズ湖) Lacul Bicaz 2010.8.7
私は5年前の旅行でヴィデラル湖(Lacul Videral) を見ましたが、そこよりもこちらの湖の方が大きいというのが実感されました。
この湖は小川に注ぐところがダムのように堰き止められ、水の出水量が調節されていました。そこで調節された水はコンクリートの壁を伝って谷底200メートル(もしかしたらそれ以上)の小川に流れ込みます。その斜めに切り立つコンクリートの壁を伝って水が流れ落ちる様をコステルはカスカーダ(滝)と説明したのです。それは迫力のある光景でした。